海外メディアが報じた日本に関するニュースから英語表現を学びましょう!今回は、「核融合」という壮大なスケールの科学に関するニュースを紹介します。
時事英語専門のオンライン辞書サイト「RNN時事英語辞典」編集長の廣川です。今月、「核融合実験で投入量を上回るエネルギー獲得に成功」というニュースが駆け巡りました。人類が無限のエネルギーを手に入れることができるともいわれるこの技術について、英文記事で詳しく見ていきましょう。
American scientists have announced what they have called a major breakthrough in a long-elusive goal of creating energy from nuclear fusion. (*1)
核融合によりエネルギーを生み出すというとても困難な目標において、アメリカの科学者らは、大きな躍進と呼ぶ成果を発表した。
Very early that morning — 1:03AM on December 5th — NIF shot 192 laser beams at a tiny target filled with fuel and achieved “fusion ignition” in a controlled setting for the first time on Earth. (*2)
深夜(12月5日午前1時3分)に、NIFは192本のレーザービームを燃料に満たされた極小の目標物に対して照射、地球上で初めて管理された状態での「核融合点火」を達成した。
That means that they’d been able to generate more energy through nuclear fusion than the laser energy used to kick off the reaction. (*2)
核融合によって、反応をスタートさせるのに使ったレーザーのエネルギーより多くのエネルギーを発生させることができたことを意味する。
実験に成功したのはアメリカの国立研究所に所属する科学者たちです。NIF(=National Ignition Facility)は米国立の核融合実験施設。核融合によって投入したエネルギー以上の量のエネルギーを発生させることに成功したのです。
- breakthrough 大きな成果
- nuclear fusion 核融合
- fusion ignition 核融合点火
核融合とはいったいどんなしくみなのでしょうか。
Nuclear fusion is a man-made process that replicates the same energy that powers the sun. Nuclear fusion happens when two or more atoms are fused into one larger one, a process that generates a massive amount of energy as heat. (*3)
核融合は太陽を燃やしているのと同じエネルギーを再現する人工の作用。核融合は2つ以上の原子が1つの大きな原子に融合する際に起き、膨大な量のエネルギーを熱として発生させる過程だ。
The nuclear power plants we have today generate electricity through fission, which is sort of the opposite of fusion. Fission releases energy by splitting atoms apart rather than fusing them together. (*4)
今日の原子力発電所は、核融合とは逆のものと言える核分裂を通して発電している。核分裂は、原子が一緒になるときではなく、分割するときにエネルギーを放出する。
太陽で起きている現象を、実験室で再現したということになりますが、原子を融合させるには水素を高温・高圧にできる環境が必要で、これまで研究が重ねられてきました。
- nuclear power plant 原子力発電所
- (nuclear)fission 核分裂
fusionとfissionは綴りが似ていて間違いやすいので注意!
では、今日実用化されている原子力発電とはどのような違いがあるのでしょうか。
In theory, once humans figure out how to make nuclear fusion happen in a controlled way, the possibilities are endless. Hydrogen is the simplest and most abundant element in the universe. You can get it from seawater, for example. And if you do, a single gallon of seawater can generate as much energy as 300 gallons of gasoline, according to the Department of Energy. (*4)
理論的には、管理された方法で核分裂を起こす方法がわかれば、可能性は無限だ。水素はこの宇宙でもっとも単純でありふれている。例えば海水からも水素を得られる。エネルギー省によると、1ガロンの海水から、300ガロンのガソリンにより得られるのと同量のエネルギーを得られる。
Fusion doesn’t have these problems(注1). With fusion, you’re building new atoms — usually helium, as in the stuff that’s in balloons. It doesn’t generate greenhouse gas emissions. (*4)
核融合では、処理の難しい放射性廃棄物が発生するといった(注1:筆者補足)問題は発生しない。核融合では新しい原子—たいていは、風船の中身に含まれるものと同じヘリウム—が作られる。温室効果ガスも発生しない。
反応に必要な水素はほぼ無限、さらに反応後に排出されるのはヘリウムのみ。二酸化炭素も出ないとあって、実用化すればまさに夢のエネルギーです。
- hydrogen 水素
- abundant ありふれている
- greenhouse gas 温室効果ガス
下線を引いた部分の表現は使えるようになっておくと便利です。接続詞onceを用いた、「いったんAすると、Bだ」という表現です。onceのあとの文は未来のことを言っていても未来形を使わないのがポイントです。
ガロンはアメリカでよく使われる単位で、1ガロン約3.785リットルです。
いかがでしたでしょうか。核融合技術の実用化にはまだまだ解決すべき課題が多く、長い時間がかかるとみられていますが、今後の研究開発の進展に注目が集まります。
次回の記事をお楽しみに。
*1 https://www.pbs.org/newshour/science/what-a-breakthrough-in-nuclear-fusion-technology-means-for-the-future-of-clean-energy
*2 https://www.theverge.com/2022/12/15/23510819/nuclear-fusion-ignition-breakthrough-physicist-tammy-ma
*3 https://edition.cnn.com/2022/12/12/us/common-questions-nuclear-fusion-climate/index.html
*4 https://www.theverge.com/23508872/nuclear-fusion-power-clean-energy-breakthrough-explained
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